初稽古

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先日、本年初の稽古を師匠・宮下伸先生につけてもらいました。
あわせて、公式サイトへの掲載内容などの打ち合わせが半分。

また、今年の爪入を先生から拝領。爽やかな色彩で本年の歩みに寄り添います。
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先週、福島県郡山市で行われた『Soul of Japan 鎮魂の響』と題した演奏会へ三十絃で出演した話を伺いました。

経済偏重の政策の中「景気回復」と言われながら、「仮設住宅の中で凍えているところ、道路などはどんどん新しくなっていくが、我々個人までは支援がなかなか下りてこない」という現状を訴える現地で聞いた被災者の声、また、いま邦楽とともに日本の心が急速に失われてきている話、危機感をもって邦楽を励んでいく必要があることなどをお聞きしました。

また、本年は秀龍が代表をつとめるNPO法人伝統芸術ライブラリーの、新たな一歩を踏み出す予定でいます。邦楽をしっかり次世代へと繋いでいくこと、社会への貢献を通して、そのための人材を育成し支援していくこと、そうした見地に立ち、新規事業の立ち上げをはかりたいと考えています。

最後になりましたが、年頭にあたり、関わる全ての方々のご健康をお祈りいたします。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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宮下伸 三十絃・箏作品演奏会

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10月19日紀尾井小ホールにて、宮下伸作品による演奏会が開催されました。
満員御礼の大盛況でした。

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開場直前、出演者へ家元の挨拶
「楽しんで、やれ」と。

家元挨拶の間にも、入口にお客様が殺到していて、開場を早める由、秀龍は切符もぎりの支援を緊急に指示され、家元の横をすり抜けて受付へ。

全席自由ですから、聴く方もスタートダッシュが肝心であることをよくご存じなのです。開場時間には客席はほぼ満席に。

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プログラム冒頭は新作初演となる『熊野古道』三十絃独奏。

続いて演奏会タイトルともなっている、やはり新作初演『海光』を、宮下先生と、お孫さんの宮下蒼(あおい)君、御母堂様の宮下紫乃先生の合奏となりました。蒼君は初ステージ。プログラムに「海の彼方から幸いの光が射し、明日の未来へ向かって伸びゆく力を確信する。」とあります。萌芽して、これから育っていく力は、邦楽の宝です。ステージは堂々たるものでした。

演奏後の貴重なショット。
蒼君の後方は演奏会プロデューサーであります道源飛鳥先生、家元夫人です。

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この笑顔。

さて、その後は幹部による合奏曲が続き、秀龍も『星羅』を無事弾き終えました…。

アンコールには宮下先生の箏、賛助出演の善養寺惠介さんの尺八で『風花』。本当に、先生の箏の音色は素晴らしい…。

やっぱり演奏会は良いですね。
ステージを踏む、という「修行」を初心に返って進めなければならないな、と再認識いたしました。

最後に、先生と…
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師匠レッスン

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10月19日の演奏会に向けて、練馬のご自宅で師匠のレッスンを受けてきました。いままで、先生が群馬にいらした時にレッスンしていただいていたため、実はご自宅は初めてでした。

めったに目にできないものもありました。
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こちらは芸術祭大賞の盾。
次には、松尾芸能賞。「三十絃に生命を吹き込んだ」と、具体的に評価が述べられています。

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演奏会の案内も刷り上がっていました。

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秀龍は『星羅』を六人の合奏で演奏の予定です。

静寂

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葉山・森戸海岸で朝を迎えています。

夜明けの相模湾は、少し雨模様、灯台を光らせている江ノ島は、次第に霞んでいきました。

冷たい潮風と潮騒が、かえって秋のような静けさを思わせます。

師匠は陰影をつける、と表現していますが、静寂に常に立ち返り、「動」を創造していくことの大切さをあらためて感じました。

師範免状を受く。

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さる8月11日、練馬・ホテルカデンツァ光が丘にて、宮下社免許状授与式が挙行され、秀龍は師範昇格となりました。

準師範(名取)を拝受してから、ちょうど10年。

授与式中、家元の前に立ったとき、万感胸に迫るものがあり、不覚にも、胸の奥から湧き上がってくる熱い迸りを抑えることができませんでした。

もちろん、「資格」が箏を弾く訳ではありませんから、「師範」に特段の思い入れがあるわけではありません。特に意識をしてはいなかったのですが、10年という、自分の三十代の全てが、感情の波となって押し寄せてきていたようです。

小規模のコンサートを自分で企画してポスターやチラシ、チケットから自作するゲリラ的な演奏活動からスタートし、正式なオファーをコンサートホールから初めてもらった時の喜び、コンクールにチャレンジを始めて、ようやく本選に入った時、そうして初めて入賞した時の高揚感、小中学校や大学での特別授業、NPOの創設…

箏を幼少から師事し、宗家へ送り出してくれた早河秀桂先生の真心、魂のこもった友人たちの支えがあり、この10年を過ごせて来られたものと思います。

そして何よりも師匠・宮下伸先生の存在は自分にとって筆舌に尽くしがたい、かけがえのないもので、師の心を思えば、応えられていない、果たせていない課題があまりにも多く、ただただ、申し訳なく思うばかりです。

これまで、支えていただいてきた方々の真のご厚情に、感謝の気持ちで一杯です。

これからの10年の自分のミッションを考えています。

伝統芸術は、平和かつ調和的な社会の構築に必ず必要なものです。伝統芸術そのものが各々の地域の八百万の神々、自然の表現であるともいえるし、歴史的背景には豊かな地域間・国際的交流が存在しています。

師匠は、ワールドツアーを何度も経験し、自作曲を通して様々な民族の音楽家と交流を重ねてきていますが、ワールドミュージックとしての箏の位置付けを繰り返し述べています。

つまり伝統芸術というものは、それが存立する地域の気候風土に立脚した個性を表現すると共に、国内外の様々な地域との間の豊かな交流すなわち「調和」を内包して存在しているものなのです。地域間の調和とは、より広義の社会においては「平和」を意味します。

これまでの10年の間、自分自身の役割を考え続ける中で、その一番奥に「平和」というキーワードが次第に重みを増してきていました。

これからの世界に対して、大変にささやかなものであるかもしれませんが、昨年末、師匠を顧問にいただき創設したNPO伝統芸術ライブラリーを拠点に、具体的な取り組みを為してまいります。

また師範として、率先垂範して音色美を追求する修行者であり続けたい、そんな思いを新たにしています。

東日本大震災から二年…

東日本大震災で犠牲となられた方々に、深く哀悼の意を捧げます。

また、いまだ多大なる労苦を強いられている被災者の皆様が一刻も早く復興を成し遂げられることを心よりお祈りいたします。

昨年、NPO法人として伝統芸術ライブラリーを設立いたしましたが、それに際
して、被災地の復興、また伝統芸術の維持・復興へ寄与することが念頭にありました。

具体的な活動を、東北のため、また日本のため、我々の未来のために行っていきたいと思います。

夢の軌道

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東上線の高坂駅から、清澄というゴルフ場へ向かって廃線跡が延びている。かつて粘土などを採取したものを運んだらしい。関越道の高坂サービスエリア付近で、架線柱の並んだ廃橋が架かっていることで比較的知られているが、現役時代が短くネットで得られる情報も限られている。

長大な築堤など、遠目にはよく眺めていた。

ある晩、この廃線跡を歩いている自分を夢に見た。その中で、コンクリートの短い洞門が印象に残って、目覚めた後も、そんな施設が残っているのかなあ、と朧気に記憶に止まっていた。

ついこの間、そういえば、とPCで検索してみたところ、ヒットした探索リポートの中に、夢に出てきたような洞門が目に留まった。

もしかしたら何気なく見ていた映像が夢に反映されたのかもしれない。しかし現実感が極めて希薄であるが故に、この目で確かめたくなった。

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風のまだ冷たい日だったが、よく晴れていた。ゴルフ場の管理棟に通じる道に車を停めて、踏切の標識の土台の残る所から廃線跡に入った。

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よく手入れされていて、また固くしまった路盤は歩きやすい。

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古めかしいガーター橋を渡り、眼下に田園の広がりを眺めながら「夢の風景」を目指した。

沿線には倒された架線柱が鉄筋を晒して横たわっている。

春の近さを感じさせる明るい光に満ちているが、冷たい風が首から体温を奪う。
雄大な築堤が緩やかにカーブしている。
やはりどこか現実感が希薄だ。

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築堤の先の方には、かつての砂利採取のプラントが、比較的規模の大きな工業団地に造成されているのが望まれる。途中駅のあったらしい場所だ。

下の方の民家の庭で燃やしているゴミの煙を抜けて、築堤が藪に挟まれているところに突入しながらカーブを辿っていくと、下から急坂で登ってくる砂利道の踏切跡の柵があって、その先に「それ」はあった。

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新しいように見えるほど白く輝いていた。夢と目の前の光景をだぶらせながら近づいていくと、確かに、夢で観たように洞門内に架線柱などの資材が積置かれたりしていた。やはり、前に着たことがあるようだ。

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洞門の先は路盤が土砂で覆われていて、ぽっかりと空が見えた。

その向こうは、造成の工事現場が全く異様に広がっていた。

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