師範免状を受く。

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さる8月11日、練馬・ホテルカデンツァ光が丘にて、宮下社免許状授与式が挙行され、秀龍は師範昇格となりました。

準師範(名取)を拝受してから、ちょうど10年。

授与式中、家元の前に立ったとき、万感胸に迫るものがあり、不覚にも、胸の奥から湧き上がってくる熱い迸りを抑えることができませんでした。

もちろん、「資格」が箏を弾く訳ではありませんから、「師範」に特段の思い入れがあるわけではありません。特に意識をしてはいなかったのですが、10年という、自分の三十代の全てが、感情の波となって押し寄せてきていたようです。

小規模のコンサートを自分で企画してポスターやチラシ、チケットから自作するゲリラ的な演奏活動からスタートし、正式なオファーをコンサートホールから初めてもらった時の喜び、コンクールにチャレンジを始めて、ようやく本選に入った時、そうして初めて入賞した時の高揚感、小中学校や大学での特別授業、NPOの創設…

箏を幼少から師事し、宗家へ送り出してくれた早河秀桂先生の真心、魂のこもった友人たちの支えがあり、この10年を過ごせて来られたものと思います。

そして何よりも師匠・宮下伸先生の存在は自分にとって筆舌に尽くしがたい、かけがえのないもので、師の心を思えば、応えられていない、果たせていない課題があまりにも多く、ただただ、申し訳なく思うばかりです。

これまで、支えていただいてきた方々の真のご厚情に、感謝の気持ちで一杯です。

これからの10年の自分のミッションを考えています。

伝統芸術は、平和かつ調和的な社会の構築に必ず必要なものです。伝統芸術そのものが各々の地域の八百万の神々、自然の表現であるともいえるし、歴史的背景には豊かな地域間・国際的交流が存在しています。

師匠は、ワールドツアーを何度も経験し、自作曲を通して様々な民族の音楽家と交流を重ねてきていますが、ワールドミュージックとしての箏の位置付けを繰り返し述べています。

つまり伝統芸術というものは、それが存立する地域の気候風土に立脚した個性を表現すると共に、国内外の様々な地域との間の豊かな交流すなわち「調和」を内包して存在しているものなのです。地域間の調和とは、より広義の社会においては「平和」を意味します。

これまでの10年の間、自分自身の役割を考え続ける中で、その一番奥に「平和」というキーワードが次第に重みを増してきていました。

これからの世界に対して、大変にささやかなものであるかもしれませんが、昨年末、師匠を顧問にいただき創設したNPO伝統芸術ライブラリーを拠点に、具体的な取り組みを為してまいります。

また師範として、率先垂範して音色美を追求する修行者であり続けたい、そんな思いを新たにしています。

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